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2017.03.01 冊子『incu・be』

異分野とのコミュニケーションこそ、道を拓くチャンス 荒川 竜太

異分野の中にいるからこそ、自分のやりたいことを実現しながら輝ける」。農学博士でありながら、一見すると畑違いに見える建設会社で働いている荒川竜太さんの言葉だ。現在、東急建設の研究企画グループで、新規事業の探索や植物工場事業のサポートなどを行っているという彼に、異分野に活路を見出したきっかけを聞いた。

農業研究への想いが博士学生への転向のきっかけ

「農学出身者がゼネコンへ就職というと違和感を感じられるでしょう」と朗らかに話す荒川さんは、大学院修士課程ではアーバスキュラー菌根菌という、植物生育を助ける菌を用いた荒廃地緑化に関する研究を行っていたという。修了後は地元で働きたいという考えもあり、農学分野からは離れ化学メーカーに就職した。3 年ほど勤め、「安定した生活ができていたし、やりがいは感じていた」が、一方で、農学研究をしたいという想いが尽きることはなかった。「チャレンジするなら20代のうちに」と転職や公務員試験も視野に入れて調査をしたが、自分のやりたい研究ができる環境には出会えなかった。そこで頭に浮かんだのが、会社を辞めて新たに博士課程に進むという選択だった。「研究経験を深めながら、もう一度、次の挑戦のフィールドはどこなのか、じっくり考える時間を持とうと思ったのです」という荒川さんは、再び北の大地に舞い戻った。

議論の積み重ねが、意外な出会いを生んだ

入学当初から修了後のキャリアについて意識していたという荒川さん。しかし、博士課程の就職活動に関する情報は少なく、イベントも修士課程向けのものがほとんどだった。そんな中、光明をもたらしたのは、大学が主催していた若手研究者と企業の交流イベント「赤い糸会」だった。そこでは各回製薬、食品、IT、機械、 建築等多岐に渡る業界の企業と学生が交流できる。「自分の研究分野がそのまま合致する企業はありませんでしたが、そこでめげなかったのが今となっては良かったですね」と振り返る。企業が今どんな取り組みをしているのかを知り、表面上の情報では企業のニーズと自身の研究内容に隔たりがあるとしても、自分の研究が企業にとってどのように活用できるかというディスカッションを企業担当者と繰り返した。その積み重ねが結実して出会ったのが、今の職場である東急建設だった。赤い糸会でのディスカッショ ンの内容が研究所長の耳に入り、「植物工場事業を手掛ける子会社を見に来ないか」と声がかかったのだ。思いもよらないキャリアパスが拓けた瞬間だった。

異分野に飛び込み、自分の活躍できる舞台を創る

子会社での3か月間のインターンシップを経て、荒川さんは東急建設本社に入社した。「社内では唯一の農学専門家としての専門性は、他の社員とは一線を画する視点として、思った以上に重宝されています」。異分野の舞台に上がったことにより、より一層のやりがいが得られているという。植物工場を含め、新しい研究開発を積極的に仕掛けるプロジェクトも任されるようにもなった。異分野の場で活躍のチャンスをつかむ秘訣を聞くと、「就職のときと一緒です。好奇心を持って様々な分野に飛び出し、コミュニケーションを取り続けることが重要」と彼は語気を強めた。

自分の専門性にとらわれず、様々な人と積極的にコミュニケーションを取り続ける。一見関係なくても、じっくり話をする時間を持つ。そうすることで、後々にお互いの興味関心が交わる場合も多いと話す。研究を加速させるためだけでなく、新しい活躍の場を切り拓くためにも、研究者は異分野との交流をとり続ける必要があるのだ。

荒川 竜太さん プロフィール

2009年3月北海道大学大学院農学院修士課程修了を修了し、化学系メーカーの研究開発を3年間担当した。その後退社し、2012年4月から修士時代に所属していた研究室の博士課程に入学し、2015年3月に修了。2015年4月に東急建設株式会社技術研究所に入社し現在に至る。博士(農学)。