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2016.06.01 研究応援

溢れる情報から独創的な価値を 株式会社プロトコーポレーション

株式会社プロトコーポレーション 取締役 管理部門担当 清水 茂代司 氏

もしあなたが自動車の購入を検討したことがあれば、プロトコーポレーションという会社をご存知だろう。♪カーといえばGoo♪の会社と聞けば、認知度は大きく跳ね上がるに違いない。1977年に名古屋で創刊された中古車情報誌「Goo」は約40年の時を経て、日本はもちろん海外の中古車マーケットでも欠かせないメディアとして成長を遂げている。2012年にはIT本部を開設。全社員の1/10にあたる80名のエンジニアが、自動車にまつわる情報を 分析し、アジャイルなサービス開発を行っている。「自動車にまつわる新しい仮説を、研究者と共に立てて行きたい」。同社取締役の清水氏が、リバネス研究費プロト賞の狙いを語った。

図1

社会を変えてきた自動車という工業製品

世界で初めて量産を実現した大衆車「T 型フォード」が登場したのが一世紀前。その後、世界中に道路網が張り巡らされ、Door to Door で高速移動できる強みから郊外都市や広域経済圏が発展、石油を中心とした経済構造が構築されるなど、自動車は社会を大きく変えてきた。自動車の所有は富の象徴にもなり、憧れの対象として単なる移動手段以上の価値を感じている人も少なくない。しかしその自動車が、大きな転換期を迎えている。「日本は少子高齢化で、自動車の購買人口が減るのは避けられないでしょう」。 経済産業省生産動態統計によれば、2014 年の四輪自動車の国内販売台数は 968 万台。2013 年(973 万台)に比べれば 0.5%減とほぼ横ばいではあるものの今後の販売台数の増加を見通せる材料は少ない。「しかし、Google は人工知能による自動車の無人走行を実現しています」。無人走行が普及すれば今自動車を運転できない人も自動車を使うことができるようになるだろう。新しい技術が、自動車の用途を押し広げていくに違いない。自動車は社会を変える主体として、今後も重要な存在であり続ける。「販売台数の推移だけで、自動車の未来が暗いという議論をするのは、いささか乱暴ですよね」。

 

プロトが果たしてきた役割、今後担う役割

プロトコーポレーションの屋台骨を支えているのは、中古車販売領域における広告事業だ。上述のGoo は、日本 国内だけで 1 万 8 千社を超える自動車メーカーや中古車販売業者が活用するに至っている。それに伴い販売エリア、車種、色、年式、走行距離、事故歴、修理歴そして、販売 価格等の情報が集まってくる。この強みを活かしたサービスが「Goo 鑑定」だ。第三者のプロ鑑定師による鑑定結果と、プロトが持つ各種情報を総合的に分析。中古車販売店に対して適切な仕入れ価格や想定される販売価格を提供する。中古車販売店のリスクや負担を低減し、購入者にとっても中立的な情報と適正価格での購入に繋がる。大量の流通情報を持つ同社だからこそ、信頼できる数値を導き出せるのだ。 「中古車市場の情報を活用すると、他にもできることが出てきます。そのひとつが自動車の残価予測です」。新車購入から数年後の売却価格を予測することができる。さらに、車検の時期や修理費などを考慮すると出費シミュレーションが導き出せる。場合によっては新車を使い続けるよりも、売却して別の新車に買い換えたほうがトータルの出費を抑えられることもあるという。この独自アルゴリズムは新車販売店に提供され、新車の購入提案に活用されてい る。「そういう意味では自動車は金融商品とも見なせます。プロトは情報を活用して、自動車や自動車が活用される社会に新しい価値を提案しているのです」。

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IT本部最上階には開放感のあるオープンスペースを設置。 80名のエンジニアが熱いディスカッションを行っている。

若者の車離れは本当か? 時代を読み解き未来を創れ!

「若者のクルマ離れ、あの表現は間違っています」。とある調査※ 1 によれば自動車に興味関心があると答えた20 ~ 30 代男性は 2001 年の 70%強から、2011 年には共に20 ポイント以上低下している。一方でカーシェアリングの利用者の 60%以上が 20 代~ 30 代という報告※2 がある。嗜好の多様化や社会インフラの高度化、若年層の所得低減のなどの理由から、若者にとっての自動車は“所有するもの” から“ 使用するもの”に変わってきたのだ。「若者は自動車から離れた訳ではありません。そもそも近づいていない人もいますし、使用できればいいという人もいます」。変化の早い社会の中で、独り歩きする言葉に惑わされずに常に仮説を持ってデータに向き合う。この姿勢で、上述のIT 本部から幾つかのサービスが生まれつつある。リバネス研究費ではその仮説を共に考えられる研究者との出会いを求めている。 自動車の業界に関わる同社の業績を心配する声は少なくないが、そんなに悲観的ではないんですよと清水氏は笑って応える。「社会的な位置付けが変化しても、そう簡単に自動車が無くなることはありません。独自の情報をうまく活用すれば、我々が果たす役割はむしろ大きくなっていくでしょう。自動車がもたらせる未来を、一緒に考えてみま せんか?」。(文・坂本真一郎)

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2012年に東京都文京区に設立されたIT本部には、「プロトの未来はIT本部の本部が創る 」と記載された自動販売機が置かれている。

図1中古車登録台数が35万台に上るポータルサイトGoo-net
http://www.goo-net.com/
メーカー毎やボディータイプ、価格など様々な側面から中古車の検索が可能。「Goo鑑定」は、同社の所有する情報を活用したユニークなサービスであり、適正価格での中古車購入を実現している。

 

PROFILE

株式会社プロトコーポレーション 取締役 管理部門担当 清水 茂代司 氏
名古屋大学工学部卒業後、安田火災海上保険株 式会社(現株式会社損害保険ジャパン日本興亜) に入社。平成11年8月にプロトコーポレーション入 社後、人事、広報等の管理部門の責任者を歴任。 平成20年6月に取締役に就任し、現在に至る。

※1 http://www.iatss.or.jp/common/pdf/publication/iatss-review/37-2-05.pdf
※2 http://www.jaef.or.jp/6-traffi-cation/img/TC_34_t.pdf