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2017.02.01 冊子『incu・be』

合成生物学に 自分のフィールドを作る 片山 翔太

池田理化賞奨励賞に採択された北海道大学大学院医学研究科の片山翔太氏は「自分で研究費を獲得する練習をしたかったのと、自分の研究が外部の人にどれだけ評価されるのかを知りたかった」とリバネス研究費への応募の動機を語る。合成生物学の新分野を切り拓くべく、片山氏の挑戦が始まっている。

遺伝子発現のデザイン

 片山氏は、生命科学研究で近年注目が集まっているゲノム編集の手法を応用した遺伝子発現制御に挑戦している。池田理化賞に採択されたのは、2015年9月。それから約半年後の2016年2月に申請内容の研究が論文としてアクセプトされた。メチル化という現象が起こっているDNA領域を、非メチル化状態に置き換える新しい方法を論じた内容で、ゲノム編集技術のひとつCRISPRCasシステムを改変したものだ。DNAのメチル化は遺伝子発現のオン・オフと密接に関係しており、その状態を人工的に変えられることは、研究上、医療への応用上意義がある。論文では、メチル化状態から非メチル化状態に置き換えたことで、遺伝子発現がオフからオンになったことが示されている。「採択されたテーマだったので、早く結果を出せてホッとしています」と振り返る。

自分しか思いついていないアイデアを実証する

「修士の時に在籍していた京都大学時代は応用研究が中心でした。自分以外でもできる研究は自分がやらなくてもいい、自分しかできないことをやろうと思い、色々と探している中で現在の研究室にいたりました」。片山氏は、今取り組む意味があり、人とは違う研究をすることにこだわる。京都大学の山中伸弥教授が、「人に何を言われようと、自分の思うことをやっていい」とセミナーで話すのを聞いたことが、ひとつのきっかけだった。その時から、与えられたテーマももちろんやるが、独自性を大事にするようになった。今回の論文のことにもふれながら、自分しか思いついていないだろうという切り口でテーマに取り組むことが楽しいと語る。一方で、うまくいかなかった時は自己責任だと割り切る潔さも感じられた。

研究室を構えて突き進みたい

 すでに今回の論文の成果を利用して、選択的に細胞を制御する方法の開発にも取り組み始めているそうだ。さらに、個体レベルでの制御が可能になれば腫瘍を小さくするといったことにもつなげられるかもしれない。企業との共同研究も積極的に進めながら、博士課程修了後の早い時期での独立も模索する。「31歳までにはラボを持ちたいです」と話す片山氏は、野心的に先を見据えながら挑戦を続けている。

(文・高橋宏之)